GoogleのMusic Timelineは音楽史じゃないですよ。
Googleの新サービス、Music Timelineがネット上で話題になっている。
はてなのブコメなどを見てみると、これをGoogleによる音楽史の視覚化サービスだと勘違いしている人が多いようだ。
Gigazineでも取り上げられている(Googleがクリックするだけで音楽の歴史をジャンル別に表示できるサービス「Music Timeline」を公開)が、こちらも勘違いして報じている。それは違うぞというのをちょっとメモしておきたい。
このグラフはなんなのかと言うと、Google Play Musicを利用して音楽を聴いているユーザーの、今現在におけるライブラリのデータを視覚化したものだ。
上に書かれている1950、1960…という年号は、その年にどの音楽ジャンルが多く聴かれていたかを表しているのではなく、現時点で、ユーザーのライブラリに入っている音楽を年代順に表したものだ。要するにこれは音楽の歴史ではなく、ビッグデータ分析の一種である。
一つのジャンルを追いながら横に沿ってグラフを見てみよう。例えばジャズは、1950-60年あたりにリリースされた楽曲が今でも圧倒的に多く聴かれており、それに比べると70年代以降の楽曲はあまり聴かれていない、ということが分かる(あくまでも今現在の話である。ジャズの全盛期が1950-60年代だった、というような音楽史的な話とは根本的に異なる)。
一方ポップスは、60年代半ばの楽曲が一番人気ではあるものの、それ以降にリリースされた楽曲も平均的に好まれている、と分かる。
また、グラフを横ではなく縦に沿って見ると、ある年においてリリースされた楽曲のうち、どのジャンルがいま好んで聴かれているかが分かる。
例えば、1950-80年代あたりまではそれぞれのジャンル間に顕著な好みの差が見られるが、現在に近づくにつれてその差は小さくなっていき、ジャンルの好みが平均化していくのが読み取れる。2000年以降リリースされた新曲の中で突出して好まれるようなジャンルは無く、わりと平均的に、みながみな好きなものをバラバラに聴いている、という状況のようだ。
もっと細かく見ていけば色々発見があるだろう。また、バンド/アーティスト別のグラフを表示することも出来たりと、色々面白そうではある。
ただ、注意したいのは、これが単にGoogle Play Musicのユーザーデータでしかない、という点だ。ほかのサービス、例えばiTunes Storeなどのデータを集計すれば、少々違ったグラフが出てくるのではないだろうか。また、クラシックについてもこのデータには含まれていない。さらに、ジャンル分けにも少々問題があるようだ(例えばU2はロックではなくオルタナに分類され集計されている)。
こうした問題については
The History of Popular Music, According to Google - Alexis C. Madrigal - The Atlantic
がやや詳しく論じている。参考までに。