『進撃の巨人』はブラック企業漫画だよ、というお話。
NHKで放送された「居酒屋甲子園」が話題になっている。これを見てふと、『進撃の巨人』じゃんと思ってしまったのは私だけだろうか?
問題の絶叫演説シーン
進撃の巨人の絶叫演説シーン
ホラ、同じだ。
「心臓を捧げよ!」のポーズ真似してる人たちまでいるし。
そこから逆に『進撃の巨人』について考えてみると、これってブラック企業漫画じゃないの?と言いたくなる部分が多々あることに気づく。
調査兵団なんかアレだし。「人類の自由」みたいな大義のために人がポコポコ死んでいくし。
で、そう考えた途端、自分の中で小さな疑問が解けた。
疑問というのは、エレンが裁判にかけられたシーンの、エレンの絶叫セリフ。
「いいから黙って全部オレに投資しろ!!」
私は前からこのセリフが引っかかっていた。
なんで「投資しろ」なんて言ったんだろう?我を忘れて絶叫するセリフにしてはちょっと固いというか、そこで経済用語出てきちゃいますか、みたいな。ビミョーな違和感。
でもこれ、裁判全体をブラック企業の圧迫面接だと思えば、すんなり理解できるのだ。
要は、「私は御社にとって有能な人材ですからぜひ私を人的資本としてお使いください」、という話。
そういう希望をなりふりかまわず絶叫すると、「全部オレに投資しろ!!」となる。
圧迫面接中、居並ぶ面接官に向かってヘコヘコするのはもうたくさんだ。こんな風に叫んで即採用されたら、どんなにスバラシイだろう。
そんな思いがひしひしと伝わってくるではないか。
で、有能な社畜人材であるエレン君を、調査兵団のみんなが必死に守ってくれる。「エレンを守れ!」が社員の合い言葉だ。
ほかの有象無象のキャラはポコポコ死んでいくけれど、エレンはそうじゃない。
なんせ調査兵団という名のブラック企業にとって彼は特別な存在だからだ。これぞ働く者の夢、理想ではないか。
そんなエレンの志望理由はなんなのか。
調査兵団に入ってお前は何をしたいのか?と聞かれた時のエレンの答えがこれ。
もう目とか顔とか全体的にヤバい。というか、
「とにかく巨人をぶっ殺したい」って、それおかしくない?
だって、お前自身巨人じゃん。
と誰もが思うところだが、そんなのエレンは気にしない。
強烈な目的意識にとらわれ、自己矛盾だのなんだのについてはいっさい何も悩まない。もちろん、自分が”使われる身”であることにも悩んだりしないどころが、むしろすごく積極的。
こういうところがブラック企業のブラック性に何も疑問を感じない若者の姿とダブるのだ。
しかし『進撃の巨人』が面白いのは、そんなエレンに対してちゃんとツッコミが入るところである。リヴァイ兵長は「ほぅ…悪くない…」とか言いつつ、あとで「あいつは本物の化け物だ」とちゃんとツッコミを入れている。
おまえ、なんか変じゃね?
ということだ。
居酒屋甲子園がネット上で批判された時もこんな感じだった。本人たちは悩んでいないけど、外から見て、なんかおかしいぞ、とツッコミが入る。
進撃の巨人、とても奥が深い漫画である。